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私は、私だけの道を行く。
一歩一歩を、踏み締めながら。
中央研究所 水産食品研究室
津江 Tsue
職 掌: | R&D |
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職 種: | 研究 |
仕事内容: | 食品の研究 |
入 社: | 2017年 |
「おいしい食感」
とは、何か。
「コツコツと研究するタイプの津江ちゃんだったら、ニッスイの社風が合うと思うよ。」
水産食品メーカーを志望していた私は、研究室のOBの勧めから、ニッスイの門を叩きました。会社説明会で研究職の方に話を伺ってみると、たしかに膨大な予算と時間を研究に費やしている印象を受け、それがつまりは、ものづくりを大切にする社風なのだと感じました。社員さんの人柄も飾り気のない真面目そうな雰囲気で、誠実に一筋に研究と向き合えそうな環境だと思えたのが入社する決め手となりました。
入社してから私が携わることになったのは、春巻の「食感」の研究。私が入社した頃の春巻は、フニャッと歯ごたえがなく、正直に言うと「味付け」はおいしいものの「食感」への対策は不十分でした。どうすれば春巻の食感を向上させられるのか。そして、時間が経過したあともベストな食感を損なうことなく維持できるのか。食感を探求する、私の研究がスタートしました。
研究は最初に、春巻にとっての「おいしい食感」とは何か、の言語化から始まりました。噛んだ瞬間の口当たりは、パリパリ、それとも、サクサクが好ましい? 噛み切るときは、ブチッが良いか? ネットリが良いか? 咀嚼した際は、皮が口に残る方が良いか? すぐに溶ける方が良いか? とにかく食べては感覚を言葉にして、人の主観に基づく「おいしい食感」を、誰もが共通認識できるようにアウトプットする。口にする春巻の数は、どんどん増えていくのでした。
キッチンと工場で
闘う日々。
理想の食感を生み出す、春巻の「皮」の重要ポイントは「配合」と「攪拌(かくはん)」。配合は、例えば、小麦粉や水、油などの原料の割合を変えながら、最適なバランスを見つけていきます。そして、その原料を混ぜ合わせる工程が攪拌。要するに混ぜ方や混ぜるスピードによっても、皮の仕上がりは変化してしまうので、その塩梅を研究します。
と、簡単に言いましたが、この工程が非常に難しくて...。少し配合を変えるだけ、攪拌方法を変えるだけで、結果に雲泥の差が出てしまいます。皮をつくるたびに結果が極端に変化するため、考えられるパターンを試作しては食べてを繰り返し、生地づくりに向き合っていきました。そして、キッチンで納得できる春巻が出来上がれば、次は工場の製造ラインで試作テストを迎えます。しかし、ここでも問題は山積み。
一番の問題は、想定した食感に仕上がらないことでした。キッチンでは納得できた皮も、工場で試作してみると、なんだか違う。原因として考えられるのは例えば、スケールの違い。会社のキッチンだと攪拌する際に5kgほどを混ぜる程度。一方、工場では300kg以上を一気に混ぜる必要があるので、十分な攪拌ができなかったりします。すると、食感は想定と違うものに。そうしたキッチンと工場の違いに何度も悩まされることになりました。
当社では、会社として重要だと考える研究に関しては、工場での生産が可能になるまで、その研究者自らがテスト生産に立ち会うのが通例です。そのため私も、機械の知識などには疎いながらも、工場側に改善要望を伝えていきました。しかし、量産時の生産性や効率性などを踏まえる必要がある工場側の意見も、もちろんあります。
「この成分だと作れないから条件を見直して!」「できます!ここをもう少し調整してみてください!」研究側と生産側の譲れない攻防。お互いに良い商品をつくるために何度も意見を交わし合いました。
食感研究の
パイオニア。
工場へ足を運ぶこと50回。普段の5倍近いテストの回数を重ねる私に、粘り強く付き合ってくれた工場のみなさん。「津江、お前もう、この近くに住めば?」なんて、言われながらも、ついには理想的な食感を形にすることができました。
「皮は薄く軽く、噛んだときにパリパリパリッと砕け、口のなかでいつまでも邪魔せずに、シャリシャリッと溶けるような食感」。気づけば、構想から2年の歳月を経た、私の集大成。できあがった商品は、我が子も同然です。発売後、営業から聞いた話によると商品の売れ行きは好調らしく、食感の改良によって味わいが向上した、とお客様に認められたことが、本当に嬉しかったです。
食感の研究は、味や香りの研究に比べると、まだまだ社内での先行研究がほとんどありません。つまり、まだ誰も知らない発見が、私の前に拡がっているということ。新たに形にした「食感」が、おいしさの可能性を拡げ、未来の食のスタンダートになり得るかもしれない。パイオニアというと少し大袈裟かもしれませんが、これからも新しい食感にチャレンジしてこれまでにない「おいしさ」を生み出していきたいです。
当社に入社するまでは、食感の研究に携わるなんて夢にも思っていなかった、私。けれど、わからないなりに試行錯誤を繰り返すたびに、「なにくそ!」と没頭してきた自分がいます。これからも、新たな食感を口にした時の感動をお客様に届けられることを信じて、私は私だけの道を歩んでいきたいと思います。一歩一歩を、踏み締めながら。