世界に先駆けて、医薬品原料としての生産・供給を開始​

1980年、ニッスイはEPAの高純度化に成功し、EPAの医薬品原料としての開発を開始しました。翌年には製薬会社と医薬品開発の共同研究を開始し、臨床試験を進め、1990年には高純度EPAを使用した世界初の閉塞性動脈硬化症の治療薬が許可を得て発売されました。さらに1994年には、高脂血症(血液中のコレステロールや中性脂肪値が高まった状態)の適応症が拡大されました。ニッスイでは現在に至るまで、30年以上もEPA製剤の医薬品原料の安定供給を担っています。また、EPAの持つ多様な作用は注目されており、現在でも循環器系疾患の予防、抗アレルギー作用、発ガン抑制作用、抗炎症作用などさまざまな生理機能の研究が進められています。​

図 1.EPAを抽出・高度精製を行うファインケミカル総合工場鹿島油脂工場・鹿島医薬品工場

研究のアプローチ​

天然油脂(動植物から得られる中性の脂質)には、グリセリンと脂肪酸(脂肪酸の種類には植物油に多く存在するオレイン酸、リノール酸、魚油に多く存在するEPAやDHA(ドコサヘキサエン酸)がある)が結合した形で、非常に多種の脂肪酸が共存しており、原料となるイワシ油に含まれるEPAは20%前後といわれています。これを濃縮することで、一般的に販売されている健康食品となります。​​

EPA DHA パルミチン酸
(※3)
ステアリン酸
(※4)
オレイン酸
(※5)
リノール酸
(※6)
医薬用EPA原料のイワシ油 ※1 18.2 13.5 13.7 2.4 14.2 1.2
大豆油 ※2 0 0 10.6 4.3 23.5 53.5
ラード ※2 0 0 25.1 14.4 43.2 9.6

図 2.マイワシと食用油の主要脂肪酸組成(%)の比較​

  1. ※1当社分析値
  2. ※2出典:五訂増強 日本食品標準成分表 脂肪酸成分表編(2005年)
  1. ※3パルミチン酸
    天然に広く分布する脂肪酸の1種。炭素数16、2重結合のない飽和脂肪酸。
  2. ※4ステアリン酸
    パルミチン酸と同様の炭素数18の飽和脂肪酸。
  3. ※5オレイン酸
    炭素数18、2重結合が1つの脂肪酸。
  4. ※6リノール酸
    植物に多い脂肪酸で炭素数18、2重結合を二つ有している。末端の炭素から6番目の位置に2重結合のあるn-6系脂肪酸の一種。

一方で、EPAが医薬品として認可を取得するには、現在96.5%以上の純度が求められます。酸化しやすいため取扱いも難しいEPAですが、ニッスイが開発した独自技術で、一時蒸留、高度精製を組み合わせることで、環境有害物質を除去することに成功しました。これによって、96.5%以上の純度まで高めた高純度EPAを量産することが可能になり、現在、医薬品原料として広く利用されています。​​​

図 3.高純度EPAの製造工程

  1. ※7エチルエステル
    グリセリンの代わりにエタノールが結合した化合物。エステルとは結合様式を指し(-COO-)、グリセリンとの結合でも同じ構造です。
  2. ※8HPLC
    高速液体クロマトグラフィーという装置。分離カラムと高圧の液体を用いて化合物を分離する仕組みで、アミノ酸の一斉分析を実施しています。

研究成果

現在でも、数々の機能の研究が進められているEPAですが、今後も世界的に需要が拡大していくことが見込まれています。​
ニッスイは、2021年に、米国食品医薬品局(FDA)の認可を受け、EPA医薬品原料のサプライヤーとして米国への輸出を開始しています。さらに、ヨーロッパやアジアなどの世界の医薬品市場に高純度EPAを送り出す体制を整えています。​

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