旬のおいしさが1年中味わえる完全養殖“黒瀬ぶり”｜後編｜漁師も認めるおいしさの秘密

こんにちは。生まれも育ちも志布志湾の黒瀬ぶりです。
今回は私がおいしさの秘密に迫っていきます。私を支える養殖技術については前編 でご紹介していますので、ぜひあわせてご覧ください​

ニッスイのグループ会社の黒瀬水産の久保田と申します。ブリのことならなんでも聞いてください。​

ニッスイの三木です。中央研究所大分海洋研究センターで人工種苗の研究をしています。

大分海洋研究センター近くで漁業を営んでいる漁師さんに、養殖の「黒瀬ぶり」が人気と聞きました。漁師さんも食べているんですね？​

そうなんです！昔は養殖ブリは「匂いが強い」と敬遠されたこともありましたが、完全養殖の技術の向上や配合飼料の開発などで、「おいしい！」と言っていただけるように。昔の養殖ブリの味を知っている方々だけに、うれしさもひとしおです。

いろいろ な研究を経て大きなブリが育つようになったんですね。昔の養殖ブリは2歳の春では2.5kgくらいのものも多かったから、4.5kgまで育つ黒瀬ぶりって本当大きい！​

「黒瀬ぶり」はなぜ1年中おいしさを楽しめるんですか。

天然ブリは一般的に冬が旬といわれていますが、私たちは季節を問わず 1年中おいしいブリを生産したかったんです。そのためには任意の時期に人工的に卵を得る必要がありました。

卵をふ化させて稚魚に育てる「人工種苗」をはじめ、いろいろな技術を開発しました。水温や日長など、ブリが成熟してくれる環境を徹底的に研究し、いつでも採卵することができる「成熟制御」という技術を構築しました。​

成長期のブリに「もう大人になっていいんだ！」と感じさせるんですね。​

ブリは卵からふ化すると3日目には口ができて餌を食べ始め、4日目に水面の空気を飲み込む行動をして鰾（うきぶくろ）を作ります。その袋がちゃんとできないと成長したときに形が悪くなってしまうので、光の強さや水流など飼育環境を微調整しながら行動を促します。​

これが最初はなかなかうまくいかなくて。本来ふ化する季節ではないので自然海の環境は合わず、陸上の水槽でコントロールするなど改善を重ねて、「完全養殖」といわれる方法でのブリ養殖を実現しました。

同じブリといっても、私たちには個性もありますし、毎年おいしいブリを育て続けるのは大変なのでは？

個々のブリのDNAを分析して家系を判断し世代ごとに選別して、重量・肥満度・プロポーション・遺伝的な免疫力なども考慮して、優良なブリを選んで次世代の親にしているんです。この「選抜育種」という技術によって、世代を重ねるごとに品質を向上させています。またDNAによる親判定で近親交配が起きないようにもしています。

養殖魚のおいしさは、与える飼料で大きく左右されます。一例として、20年ほど前でしょうか、当時の研究員が、それはもうあらゆる配合を実験していたところ、トウガラシのすごい効果に辿り着いたそうです。

トウガラシ？？ 私もトウガラシを食べているんですか？

ブリは通常、加工して数日経つと血合の色が悪くなってしまうのですが、トウガラシを配合した飼料だとそれが悪くならない。しかもほどよい脂のりになり、歯ごたえも向上します。

ニッスイ独自のこの飼料を「マブレス」と名付けて、グループで育成する養殖ブリの仕上げ飼料として使っています。

あの飼料が、ニッスイのオリジナルだったとは！

また、水揚げの際、ブリの身質や色合いを保つ工夫もしています。水揚げ後にブリが動き回って身をいためないように水揚げ船の上で活じめして、すぐ氷水の中へ。温度管理された加工場に直行し、冷却を継続しながら加工して出荷します。

時間との戦い！ いろいろな人が関わって水揚げの後加工から出荷まで、鮮度を落とさない工夫をしているんですねぇ。

おいしさの秘密に迫ってきました。前編では黒瀬ぶりを支える養殖技術についてご紹介していますので、ぜひご覧ください。