揮発性に対応した技術で、調理直後の香りを食卓へ​

香りは、味や食感とともに食品のおいしさを決める重要な要素のひとつです。しかしながら、加工食品では、製造からお客様に届くまでの間に香りが大きく減少します。香りは揮発性が高い成分が多く、製造時の加熱や冷却、その後の流通、保存、再加熱など様々な過程で温度変化が生じ、揮発や分解などが起こるためです。​

図 1.加工食品における香りの推移(一例)​

そこで、このような温度変化に対応できる香りの制御技術の開発に着手し、「調理した直後の作りたてのおいしい香り」をお客様へお届けできる香り強化技術を確立。「旨み引き立つ 香りUP製法」と名付けられ、ニッスイのさまざまな食品に応用されています。​

研究のアプローチ​​

技術を確立するために、まず、「ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)」と、「におい嗅ぎガスクロマトグラフィー」を併用し、各種食品で「作りたてのおいしさ」に関わる香り成分の特定を行いました。次に、特定された成分について、製造からお客様が召し上がるまでのプロセスで、特にどのステップで、どの程度減少するかをGC/MSにより分析しました。この結果をもとに、さまざまな素材や手法をスクリーニングし、香りを保持するための最適な条件を発見します。スクリーニングの際には、GC/MSによる香り成分量の確認だけでなく、実際に自分の鼻も使ってヒトの感覚を数値化しながら進めました。​

図 2.香り成分の特定(におい嗅ぎガスクロマトグラフィー)​

「旨み引き立つ 香りUP製法」は、香りの揮発を抑えるために「油」と「乳化剤」に注目。香り成分の多くが油に溶けやすい性質を持つこと、また、油が存在すると香り成分の揮発が抑えられることが分かりました。香り成分を油の中にしっかりと閉じ込めるために、使用する油の種類や、撹拌・混合条件を検討し、最適条件を見い出しました。さらに、乳化剤を併用することによって、特定の性質を持つ香り成分の油への保留性が高まることも見い出しました。これらによって、作りたての香りを維持することに成功しました。 ​

研究成果​

こうして「調理した直後の作りたてのおいしい香り」をお客様へお届けできる香り強化技術を確立し、2019年には特許登録(特許6490289号)を完了しました。例えば、「若鶏の竜田揚げ」にもこの技術が使われていますが、電子レンジで加熱して数時間経過しても作りたての香りがしっかりと残るため、お弁当にも最適です。​

図 3.香り技術を使用した「今日のおかず 若鶏の竜田揚げ」​

図 4.電子レンジ調理後の経過時間との香りの強さの推移​​

また、香り成分は味にも影響を与えます。例えば、醤油の香りが強くなると塩味が強くなったように感じられるため、香りの強化技術は減塩食品の開発においても有用な手段の一つです。この技術により、使用する調味料を減らすことに成功したさまざまな商品は、お客様に減塩という健康面のメリットもお届けすることができています。 ​

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