味を損なうことなく、健康にもうれしい食品を
「おいしい」 と感じるものは「健康」に良くないと言われますが、世の中の健康志向が高まる中、ニッスイの食品研究ではこの相反する点を両立させることを目指しています。その中でも、味覚研究においては、毎日の食事で「おいしい」と「健康」の両方をかなえることができる技術に取り組んでいます。塩味やうま味を増強する成分、苦味や酸味を感じにくくする成分、コクのある味わいを増強する成分に着目し、現在多くの商品に活用している2つの技術についてご紹介します。
図 1.味覚研究によってうまれた代表的な商品
研究のアプローチ
塩分ひかえめ技術
加工食品の製造には必須である食塩。食塩を減らしてもおいしさを損なわないようにするための方法の一つに「塩化カリウム等の食塩の代替物質を使用する方法」があります。しかし、塩化カリウムには塩味のほかに特有の苦味が感じられる欠点があり、苦味なく強い塩味を出すのは非常に難しいことが課題でした。
そこでニッスイでは、塩化カリウムの苦味を正確に評価できる官能評価システムと、評価者の選抜育成を行い、塩化カリウムの苦味を感じにくくする成分の探索研究に取り組みました。その結果、食品の風味を改善し、味の底上げをするなどの用途で使用される各種野菜エキスから、苦味や酸味の抑制効果が強い素材として「パセリエキス」を見い出しました。そして、苦味を抑える効果が強い成分を単離精製・構造解析し、その有効成分がアピインであることを突き止めました。
図 2.ニッスイ独自の塩分ひかえめ技術
そして、パセリに含まれるアピインの塩化カリウムの苦味を抑制する効果により、塩化カリウムを充分量使用しても、苦味を感じさせずしっかりとした塩味が感じられる「塩分ひかえめ技術」を確立(特許第5952832号)。アピインを高濃度に含有するパセリエキス製剤を開発し、「減塩50%さけあらほぐし」(瓶詰)をはじめ、「美味塩技(おいしおわざ)」(塩鮭などの水産加工品)など、塩分30~50%カットでもしっかりと塩味がしておいしい食品の開発に、技術が活用されています。
図 3.塩分ひかえめ技術活用商品例 : 美味塩技(おいしおわざ)シリーズ
コク味アップ技術
おいしさに重要な要素である「コク」は、味・香り・食感の刺激が複合的に関連してもたらされる感覚で、うま味調味料や食塩や砂糖を加えるだけでは生み出せません。そこで、人気のロングセラー商品「わが家の麺自慢 ちゃんぽん」(家庭用冷凍食品)のコクのある味わいの理由を徹底的に追究。調理方法やスープと具材、原材料について詳しく調べるとともに、コクを正確に評価できる官能評価システムと評価者の選抜育成を行いました。コクに影響を与える素材を一つ一つ絞り込み、その結果、そのままで食べると味が薄いものの、他素材と一緒に調理加工することで強いコクを生み出す野菜があることを発見しました。
図 4.コク味アップ技術活用商品例
そして、ニッスイでは特定の条件下でもやしエキス成分とタンパク質を混合加熱することでコクが強化することを発見し、「コク味アップ技術」を開発(特許第6530543号)。これにより素材本来のコクのあるうま味を引き立てて持続させる効果が得られます。当社独自のコク味成分を含む調味料を開発し、各種冷凍食品、瓶詰、練り製品など多くの商品に活用しています。
図 5.コク味アップ技術 イメージ図
研究成果
日本人が摂取する塩分の7~8割は、加工食品や中食・外食から摂取していると報告されており、お客様の食卓での減塩努力よりも、食品メーカーが減塩に取り組むことで大きな減塩効果に繋がることが期待されています。また、減塩は継続することが重要であり、継続にはおいしさが不可欠です。ニッスイの塩分控えめ技術は、日常の食事に継続的に取り入れていただけるおいしい減塩食品の提供を通して、お客様の健康的な食生活に貢献します。
近年、タイムパフォーマンスが重視される中、加工食品には簡便性だけでなく、求められるおいしさのレベルも高まっています。手間暇かけてじっくり調理したようなコクのある味わいを、簡単調理で手軽に召し上がっていただけるニッスイのコク味アップ技術は、おいしくて満足感のある食生活の質向上に貢献しています。