ニッスイの健康経営、2024年度の進捗
2025年01月10日
株式会社ニッスイ(代表取締役 社長執行役員 浜田 晋吾、東京都港区)では、「健康経営 (*1)宣言」(*2)に基づき2017年度より健康経営に着手、本年度で8年目となりました。2024年度の活動の進捗についてお知らせします。
2022年度に着手した長期ビジョン「Good Foods 2030」では、健康経営を人財価値向上の施策のひとつに位置づけており、2030年のありたい姿として、健康経営の実現、すなわち「一人ひとりが十分に能力を発揮できる姿」「従業員とその家族の生活の質の向上」の実現が会社としてのさらなる成果向上につながる状態となることを目指しています。
この長期ビジョンの第一段階である中期経営計画「Good Foods Recipe1」(2022~24年度)では、個人に向けて「個人の健康促進」「私生活との両立支援」、職場に向けて「働きやすくやりがいのある職場づくり」に取り組んでいます。
一人ひとりの能力を阻害する要因として、高ストレスや仕事への不満足などの心理的要因の影響度が大きく、結果、メンタルヘルス不調によって長期休業に至ることもあります。また睡眠不足・喫煙・朝食の不摂取・飲酒習慣・運動不足といった生活習慣の不良も大きな要因となり、さらに長期病欠のその他の主要因としては「がん」が挙げられます。
2024年度はこれら3点の改善を重点課題として取り組みました。
(1)メンタルヘルス対策
ニッスイでは、ストレスチェックが2015年に労働安全基準法により義務化される前の2011年から、「ココロの健康診断(ストレスチェック)を年1回実施し、メンタルヘルスの向上に積極的に取り組んでいます。
今年も全従業員に対して6月に実施し、ストレス・ハラスメントの調査結果から高ストレスと判断された部署については、パルスサーベイ(*3)を通じてそれぞれの職場に潜在するストレス源を究明し、人事部を交えた意見交換会などの具体的な職場環境の改善活動に繋げました。
また、メンタルヘルスの不調を未然に防ぐ取り組みとして、保健師による面談の実施、外部の従業員支援サービスによるケアプログラムの活用推進、高ストレス・ストレス要注意者の相談窓口の利用促進を行いました。
これらの取り組みを毎年継続する中で、ストレスチェックにおける高ストレス者率は3年前の11%から毎年減少して現在は8%台に至っており、一定の改善がみられています。
(2)生活習慣の改善
運動習慣支援アプリ「Beatfit(ビートフィット)」を活用して、アプリ内コンテンツ再生数と毎日の歩数をチーム対抗や個人で競う「新・からだ改善コンテスト」を4~6月に実施しました。肥満や生活習慣の改善を目的とし、期間中の参加者655名の平均歩数は8,000歩以上となり、目標の1日8,000歩を上回りました。
これらの取組みの効果もあり、運動習慣がある者の割合(*4)は昨年と比べ僅かながら1.0%増加しました。
「新・からだ改善コンテスト」実施告知
全従業員の定期健康診断の検査項目に、心筋梗塞・脳梗塞など循環器系疾患の発症との関連が示唆される指標であるEPA(*5)/AA比(*6)を取り入れ、全社平均0.4を目標値としています。これはニッスイの主要事業であるファインケミカル事業の中核をなすEPAを社員の生活習慣病予防に役立てる、ニッスイならではの活動です。
昨年と同様に、EPA/AA比の上昇に取り組む恒例の企画「EPAチャレンジ」を4~7月に実施し、ニッスイの機能性表示食品「イマーク EPA and DHAシームレスカプセル」を希望者全員に無償で提供しました。参加者約1,000名のEPA/AA比の平均値は0.49と目標値0.4を超えており、参加しなかった人の平均値0.24と大きな差が見られました。
また、従業員の食生活を改善し魚食を推進するため、5~7月の対象期間中に摂食した魚メニューの写真を投稿すると抽選で景品がもらえる「お魚食推進キャンペーン」を昨年度に引き続き実施し、1,300枚以上の写真が投稿されました。
これらの取り組みの中、本年度のEPA/AA比の全社平均は0.34と、前年度の0.35からほぼ横ばいではあるものの、課題のあった製造部門の約6割においてEPA/AA比の改善が認められました。
2024年EPA/AA比 部署別健康番付
(3)がん対策
がんの早期発見につなげるため、線虫によるがん検診の費用補助を行い、ハイリスク判定となった場合は精密検査の費用補助を行いました。また女性検診の受診率向上のための取り組みを強化、女性検診の乳がん・子宮頸がん検診に加えて子宮経腟エコー検査も費用補助の対象としました。35歳以上の従業員を対象に隔年で腹部エコー検査を実施していましたが、肝臓がん・膵臓がんなどの早期発見の一助として毎年実施に変更しました。
これまで同様に禁煙を促進し、就業時間の禁煙や受動喫煙の防止について再周知を図るとともに、喫煙者に対して健康被害や禁煙サポート策を周知、禁煙費用の全額補助キャンペーンを実施しました。
そのほか、ニッスイグループ全体として健康経営をさらに推進していくため、グループ企業との連携協働を強化しています。その中で、各社担当者を招集して全体会議を実施、各社の取り組み内容の共有や今後の方向性の確認を実施しました。今後のグループ全体の健康経営優良法人取得も視野に入れて、引き続きグループとしての取り組みを推進します。
今後も人財価値向上の基盤である健康経営に引き続き取り組み、従業員一人ひとりが心身ともに健やかで充実した生活を送れる環境づくりを進め、ニッスイが掲げる新しい"食"を通じた健やかな生活とサステナブルな未来の実現につなげていきます。
以上
*1「健康経営」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
*2 ニッスイの健康宣言(2016年制定)
従業員が「能力を十分に発揮できること」「従業員とその家族のQOL(生活の質)の向上」を目指して、従業員の心と体の健康を積極的にサポートすることにより、多様な人財が健康で能力を発揮できる環境を整備し、生産性向上につなげることを企図しています。
*3 パルスサーベイ
従業員の満足度に関する意識調査で、全体サーベイとは別に、対象範囲や設問を限定して短期間に現状を確認するもの
*4 運動習慣がある者の割合
「運動習慣がある者」とは、1回30分以上の運動を週2回以上実施し、1年以上継続している者。割合は2024年健康診断問診票結果より算出。
*5 EPA
EPA(エイコサペンタエン酸)はイワシなどの魚油に含まれる成分のひとつで、オメガ3系の必須脂肪酸の一種ですが、体内でほとんど生成できないため、毎日の食生活を通じて摂取する必要があります。
EPAは、心疾患リスクの軽減や血中中性脂肪の低下、抗炎症などのさまざまな作用が認められています。1990年には閉塞性動脈硬化症、1994年には高脂血症の治療薬として認可されました。
なおニッスイでは、肉中心の食生活を送る現代人に向け、肉の日(29日)の翌日の30日に青魚のEPAを摂取すること推奨し、バランスの取れた食生活を提案するため、毎月30日を「EPAの日」として一般社団法人日本記念日協会に登録、認定されました。
*6 EPA/AA比
健康を維持するEPAの機能はすでに多くのことが明らかにされていますが、今日、特に注目されているのが、EPAとAA(アラキドン酸)の体内バランスを示す比率「EPA/AA比」です。
AAは必須脂肪酸ですが、肉や植物油(リノール酸)の摂取に偏った食生活を続けていると体内で増えて炎症を促進し、動脈硬化を起こしやすい体質にするものです。一方EPAは、炎症を抑制し動脈硬化が起こりにくい体質にします。
EPA/AA比が高いと心血管疾患による死亡率が低いことが発表され(九州大学大学院医学研究院による「久山町研究」、Atherosclerosis 231 (2013) 261-267)、EPA/AA比があらためて注目されています。