「調理工程におけるトランス脂肪酸増加に関する新知見 ~天然硫黄化合物による異性化の促進~」の研究が
第12回日本油化学会関東支部若手研究者奨励賞を受賞

2024年11月05日

 株式会社ニッスイ(代表取締役社長執行役員 浜田 晋吾、東京都港区)の中央研究所研究員である小尾純志(おび じゅんじ)が、名城大学 総合学術研究科/理工学部/疾患予防食科学研究センター 本田真己准教授と実施した共同研究「調理工程におけるトランス脂肪酸増加に関する新知見~天然硫黄化合物による異性化の促進~」で、2024年10月、第12回日本油化学会関東支部若手研究者奨励賞を受賞しました。この研究は、第62回日本油化学会年会(2024年9月3~5日)の一般口頭発表で発表したものです。
 同賞は、日本油化学会関東支部所属で年会にエントリーした40歳未満の若手研究者による研究を対象として、同学会関東支部幹事の投票により選出される賞です。
 若手研究者奨励賞 - 日本油化学会 関東支部 (jocs.jp)

■受賞研究の内容
調理工程におけるトランス脂肪酸増加に関する新知見~天然硫黄化合物による異性化の促進~
   株式会社ニッスイ 中央研究所 小尾純志、坂本太郎、降旗清代美、佐藤誠造
   名城大学 総合学術研究科/理工学部/疾患予防食科学研究センター 本田真己

 EPA・DHAを含む不飽和脂肪酸は、高温で加熱するとトランス脂肪酸に変化(トランス異性化)します。これまでの疫学研究でトランス脂肪酸の摂取量と心疾患リスクに相関関係があることが示されたことから、世界中でトランス脂肪酸の低減に関する研究が行われました。その結果、部分水素添加油脂を別の油脂で代替させる技術などの導入により、トランス脂肪酸含量の低い油脂が製造され利用が進んでいます。
 一方で食用油脂としての不飽和脂肪酸はさまざまな食材と組み合わせて加熱されることが多いにもかかわらず、それらに含まれる成分が不飽和脂肪酸のトランス異性化に及ぼす影響を評価した研究の報告はほとんどありません。

 そこで、本研究では不飽和脂肪酸と食品成分を組み合わせて加熱したモデル試験を行ったところ、天然の硫黄化合物であるイソチアシネート類(ワサビ・マスタードなどの辛み成分)およびポリスルフィド類(ニンニク・タマネギなどに含まれる成分)が不飽和脂肪酸のトランス異性化を促進することがわかりました。これらの成分を含有するブロッコリースプラウトやニンニク・タマネギでも同様の傾向が確認され、256通りの試験結果をもとに以下の知見を得ました。

食品成分 該当する食材 トランス化の活性 トランス化に必要な温度 抗酸化剤による制御
イソチアシネート類 ブロッコリースプラウト 強い 比較的低い 効果強い
ポリスルフィド類 ニンニク・タマネギ・リーキ あり 高い 効果弱い

 本試験結果より、トランス脂肪酸の制御策として、イソチアシネート類に対しては抗酸化剤の付与、ポリスルフィド類に対しては低温加熱といった具体的な方法を示すことができました。

 ニッスイでは、さまざまな食の可能性を追求し、「心と体を豊かにする新しい"食"」「社会課題を解決する新しい"食"」を創造する研究開発に取り組んでいます。今後も食品や素材に関する研究を積極的に行い、その成果を活用して、人々の健やかな生活やサステナブルな未来を実現する新しい"食"をお届けしていきます。

以上

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