ニッスイの健康経営、2023年度の進捗

2023年12月19日

 株式会社ニッスイ(代表取締役 社長執行役員 浜田 晋吾、東京都港区)では、「健康経営 (*1)」宣言」(*2)に基づき2017年度より健康経営に着手して以来、本年度で7年目となりました。これまでの活動の結果、経済産業省と東京証券取引所による「健康経営銘柄」に2019~23年の5年連続で選定されています。

 昨年2022年度に着手した長期ビジョン「Good Foods 2030」では、主要な取り組みのひとつである「サステナビリティ経営推進」により、経済・環境・社会・人財の4つの価値向上を目指しています。健康経営は人財価値向上の施策のひとつと位置づけており、2030年のありたい姿として、健康経営の実現、すなわち「一人ひとりが十分に能力を発揮できる姿」「従業員とその家族の生活の質の向上」の実現が会社としてのさらなる成果向上につながる状態となることを目指しています。
 この長期ビジョン実現に向けた第一段階の中期経営計画「Good Foods Recipe1」(2022~24年度)では、個人に向けて「個人の健康促進」「私生活との両立支援」、職場に向けて「働きやすくやりがいのある職場づくり」に取り組んでいます。

 2023年度も前年度同様「個人の健康促進」の施策として、「EPA(*3)/AA比(*4)の向上」「肥満率の改善」「喫煙率の低減」を引き続き実施しました。
 また、ニッスイグループ全体で健康経営を推進するため、2022年度に健康経営キックオフミーテイングを開催、各社ごとに2023年度の取り組み課題を設定、ニッスイと連携を取りながら取り組みを進めました。

(1) 「EPA/AA比」の向上
 2016年度より、全従業員の定期健康診断の検査項目に、心筋梗塞・脳梗塞など循環器系疾患の発症との関連が示唆される指標であるEPA/AA比を取り入れ、全社平均0.4を目標値としています。これは、ニッスイの主要事業であるファインケミカル事業の中核をなすEPA(エイコサペンタエン酸)を社員の生活習慣病予防に役立てる、ニッスイならではの活動です。

 本年度の健康診断によるEPA/AA測定結果と解析(城西大学薬学部・元教授の小林悟氏による解析(*7)は、以下のとおりです。

●EPA/AA比の全社平均は、2016~18年度は目標に向けて上昇したものの、以降はコロナ禍の影響を受け21年度は0.309までに低下しましたが、22年度は微増に転じ、23年度は0.353と2019年度の水準に回復しました。
●上記の期間、心筋梗塞発症確率はEPA/AAと同様の推移となりましたが、脳梗塞の発症確率は一貫して低下傾向を維持していました。このことから、EPA/AA比が比較的低い値でも脳梗塞発症確率は抑制されEPAの効果があったものと考えられますが、心筋梗塞発症確率はEPA/AA比が0.4以下では確率の変動が激しく、積極的なEPAの摂取が必要と考えられます。

 また、これまで同様にEPA/AA比の上昇に取り組む恒例の企画「EPAチャレンジ」も実施、本年度より参加条件を撤廃して誰でも参加可能として実施しました。参加者1,023名のEPA/AA比平均値は0.5、前年の比較で0.13ポイント改善されました。
 健康診断によるEPA/AA比の測定結果は個人にフィードバックしたほか、部署ごとに集計して「健康番付」を作成しました。


 社員がEPAを含むニッスイ商品を手軽に購入できる社内サイトも整備しました。
 また、従業員の魚食を推進するため、対象期間中に摂食した魚メニューを撮影して投稿すると、投稿画像累計件数100枚ごとに抽選で景品をプレゼントする「お魚食推進キャンペーン」を昨年に引き続き実施しました。5~6月の2か月間で 1,762枚の画像が集まりました。

(2)肥満率の改善
 ニッスイの従業員の肥満率はこの3年間漸減傾向にありますが、引き続き課題としました。
 本年度は、昨年まで2回実施した「カラダ改善コンテスト」に代わり、運動習慣支援アプリ「Beatfit(ビートフィット)」を新たに導入し、これを使用して肥満率および生活習慣の改善に取り組みました。
 Beatfitには12ジャンル700以上のクラス(コンテンツ)があり、運動のほか睡眠やストレスケアにも対応し、従業員は全員無料で使用できます。
 利用促進策として、4月17日から6月16日までの期間内にBeatfit内コンテンツの動画を再生すると、再生分数10分ごとに国連WFP協会(*5)に1食が寄付され、あわせてカフェテリアプランのポイントや抽選で賞品をプレゼントするイベント「ニッスイ食堂~あなたの運動が食料支援に!~」を実施しました。

「ニッスイ食堂」実施告知


 その結果、運動時間(アプリ利用時間)は、73,670分、寄付食数は7,366食となりました。Beatfitアプリはイベント終了後も継続して利用ができ、12月11日現在で、肩こり解消などのストレッチクラスは3,096回再生、睡眠・マインドフルネスのクラスは3,795回再生、筋トレ・ウォーキングのクラスは3,032回の再生がされており、合計再生時間は133,693分となっています。
 定期健康診断結果にもとづく産業保健スタッフによる保健指導の強化や、食堂を併設する事業所では食生活改善活動も継続して実施しました。

(3)喫煙率の低減
 これまでの禁煙の取り組みによりニッスイ従業員の喫煙率は漸減傾向となっていますが、まだ全国平均より高い状況にあります。2023年3月より「365日就業時間禁煙化」を実施しており、これを継続した結果、前年より1.4%減少して20.0%となりました。全国平均を初めて下回り、開始した2016年より約10%減少しました。

 喫煙による疾病予防の強化策として、喫煙が原因となりうるがんのうち、子宮頚がんについては女性検診で子宮経腟エコー検査を追加、全身がんの早期リスク発見のために線虫がん検査を導入しました。

(4)こころの健康サポート
 ニッスイではストレスチェックが法令義務化される前の2011年から、「ココロの健康診断(ストレスチェック)」を年1回実施し、メンタルヘルスの向上に積極的に取り組んでいます。
 今年も7月に実施した結果、高ストレスと判定された部署については人事部を交えた意見交換会を通じ、それぞれの職場に潜在するストレス源を究明し、具体的な職場環境の改善活動につなげています。
 今年度より契約社員(有期契約者を含む)に対してもEAP(従業員支援プログラム)をさらに強化し、24時間電話相談可、外国語対応可など、ニッスイで働く全ての従業員が気軽に相談のしやすい体制を構築しています。

 また、ハラスメント対策として、今年度はリーダー層を対象として、ハラスメントには至らないものの部下や同僚の健康や生産性を損なう指導の防止を目的に、8月には自身のハラスメント傾向チェックを実施、自らの言動傾向を知り、自制心と自己コントロールを促すとともに、注意すべき行動を過去判例等から学ぶ研修を9月に実施しました。

(5)その他健康施策の実施
 従業員の健康に関する意識を高め、自身の行動変容につなげることを目的に「健康UPセミナー」を今年も継続し、健康リテラシーの向上を図っています。「睡眠」(5月)、「目の健康」(6月)、「歯の健康」(11月)、およびウォーキングイベント(10~11月)を実施し、延べ495人が参加しました。 

以 上

*1「健康経営」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

*2 ニッスイの健康宣言(2016年制定)
 従業員が「能力を十分に発揮できること」「従業員とその家族のQOL(生活の質)の向上」を目指して、従業員の心と体の健康を積極的にサポートすることにより、多様な人財が健康で能力を発揮できる環境を整備し、生産性向上につなげることを企図しています。

*3 EPA
 EPA(エイコサペンタエン酸)はイワシなどの魚油に含まれる成分のひとつで、オメガ3系の必須脂肪酸の一種ですが、体内でほとんど生成できないため、毎日の食生活を通じて摂取する必要があります。 EPAは、心疾患リスクの軽減や血中中性脂肪の低下、抗炎症などのさまざまな作用が認められています。1990年には閉塞性動脈硬化症、1994年には高脂血症の治療薬として認可されました。
 なおニッスイでは、肉中心の食生活を送る現代人に向け、肉の日(29日)の翌日の30日に青魚のEPAを摂取すること推奨し、バランスの取れた食生活を提案するため、毎月30日を「EPAの日」として一般社団法人日本記念日協会に登録、認定されました。

*4 EPA/AA比
 健康を維持するEPAの機能はすでに多くのことが明らかにされていますが、今日、特に注目されているのが、EPAとAA(アラキドン酸)の体内バランスを示す比率「EPA/AA比」です。
 AAは必須脂肪酸ですが、肉や植物油(リノール酸)の摂取に偏った食生活を続けていると体内で増えて炎症を促進し、動脈硬化を起こしやすい体質にするものです。一方EPAは、炎症を抑制し動脈硬化が起こりにくい体質にします。
 EPA/AA比が高いと心血管疾患による死亡率が低いことが発表され(九州大学大学院医学研究院による「久山町研究」、Atherosclerosis 231 (2013) 261-267)、EPA/AA比があらためて注目されています。

*5 日本におけるWFP国連世界食糧計画の公式支援窓口

*6「WellBis(ウェルビス)」
 一般財団法人日本予防医学協会が提供する健康管理支援システムで、健康診断結果をパソコンやスマートフォンで確認できる、ウェブ閲覧ツールです。

*7 解析対象者数は2.122人(2016年)、2,300人(2017年)、2,267人(2018年)、2,309人(2019年)、2,382人(2020年)、2,455人(2021年)、2,458人(2022年)、2,442人(2023年)

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