「カギケノリ」陸上養殖の豪スタートアップ企業に資本参加・業務提携~牛などが排出するメタンガスの削減を目指す~

2023年05月18日

株式会社ニッスイ(代表取締役社長執行役員 浜田 晋吾、東京都港区)は、海藻の一種「カギケノリ」の陸上養殖を目指すSeascape Restorations Australia Pty Ltd(商号:Immersion Group、以下「IG社」、CEO Scott Elliott、オーストラリア・ビクトリア州ポートアーリントン)が発行する株式の一部を取得し、5月8日付で業務提携契約を締結しました。
「カギケノリ」は反芻動物が排出するメタンガス発生の抑制に寄与し、畜産分野における温室効果ガス排出削減策として注目されています。

IG社 CEOのScott Elliott氏(左)とニッスイ 社長の浜田(右)

カギケノリ

地球温暖化をもたらす温室効果ガスのひとつであるメタン(CH4)は、二酸化炭素(CO2)の約28倍(*1)の温室効果を持ち、牛や羊などの反芻動物の消化の過程で排出され、畜産業界ではその抑制が喫緊の課題となっています。
カギケノリ(学名:Asparagopsis taxiformis)は、アジア・オセアニアなどの熱帯・亜熱帯海域に分布する紅藻類の一種です。カギケノリはメタン生成細菌を抑制することにより、牛から排出されるメタンガスの排出を最大98%抑制し、あわせて代謝改善により最大22~26%の成長改善の効果があることがわかりました(*2)。これを受けて、カギケノリを養殖生産して飼料とする研究が進んでいます。
IG社は、2021年にCEOのScott Elliott氏と主任研究員のJohn Statton博士が創業したスタートアップ企業で、カギケノリ活用に関する2つの特許を保有するオーストラリア国立科学産業研究機構傘下のFuture Feed社より養殖生産・販売に関するライセンスを取得しており、日本のカギケノリ販売許可を有する唯一の企業です。IG社はすでにカギケノリの種苗生産技術を構築し、高効率の陸上養殖システムを独自に開発しており、今後パイロットプラントを建設し事業化を進める予定です。
IG社のCEOであるScott Elliott氏は、「今回のニッスイとの業務提携により、当社が独自に開発するカギケノリの生産技術を迅速に拡大することで、世界的なメタンガス削減に貢献することができます。」と述べています。

ニッスイは、IG社によるオーストラリア・ビクトリア州ジーロング近郊でのパイロットプラント建設や加工拠点の拡大を支援するとともに、2024年より日本での効果、安全性の検証、テスト販売を実施して事業化の可能性を確認する計画です。また、この協業によりIG社の海藻陸上養殖の知見や技術へアクセスすることで、ニッスイの養殖の取り組みへのシナジーも期待できます。

ニッスイでは、温室効果ガス排出削減策にも貢献するこの協業を、中期経営計画「Good Foods Recipe1」(2022~24年度)に基づく、サステナブルな未来の実現につながる新しい"食"の取り組みとして位置づけて、推進していきます。
なお本件は、2021年に実施した新規事業の社内公募でトップに選ばれた企画によるものです。

【Immersion Group(Seascape Restorations Australia Pty Ltd)の概要】
本社所在地:オーストラリア・ビクトリア州ポートアーリントン
代 表 者:Scotto Elliott氏
創   業:2021年5月28日
資 本 金:15,564豪ドル
従 業 員 数:10名

以 上

*1 出典:IPCC第5次報告書
*2 出典:Journal of Cleaner Production 259 (2020) 120836

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