スケソウダラの「速筋タンパク」に関する若年層を対象とした研究成果について
2021年07月05日
日本水産株式会社(代表取締役 社長執行役員 浜田 晋吾、東京都港区、以下「ニッスイ」)の食品機能科学研究所では、白身魚であるスケソウダラのタンパク質(APP:Alaska Pollack Protein)の筋肉増加効果について、2009年より愛媛大学と研究を開始し、2018年3月にAPP研究会(注1)を設立し、愛媛大学・東京大学・龍谷大学・椙山女学園大学など18の大学や研究機関と研究体制を整え、共同研究を行っています。 また、ニッスイでは2020年よりAPPをスケソウダラの「速筋タンパク」という名称を使って、研究で得た筋肉増加効果の認知向上に取り組んでいます。 本研究会から得られたスケソウダラの「速筋タンパク」に関する研究成果について、これまで高齢者において特別な運動をしなくても筋肉量が増加することや、強度なトレーニングと併用して筋力が早期に増加することを確認してきました。 このほど、若年層である、特別な運動をしていない女子大学生への安静時代謝量(注2)への有用性と、部活動で強度の高いトレーニングをしている男子高校生を対象とした筋肉増加への有用性について検討し、その結果を第75回日本栄養・食糧学会大会(2021年7月3~4日、オンライン開催)において以下のとおり発表しました。
■スケソウダラの速筋タンパク摂取は若年女性の安静時代謝量を増加させる
日本水産㈱食品機能科学研究所副主任研究員 内田 健志(注3)
女子大学生20名を対象に、スケソウダラの「速筋タンパク」4.5gを含有したかまぼこスティック(フィッシュソーセージ様食品)を10週間毎日摂取してもらいました。期間中は、過度な運動や暴飲暴食を避け、日常生活を通常通り維持しています。
試験前後での安静時代謝量について7.2%の増加が確認されました(図1)。安静時代謝量の季節変動は2-4%程度といわれており、今回の結果は季節変動の影響を上回っていました。また、四肢の骨格筋量指数(SMI)の増加が認められました(図2)。
よって、スケソウダラの「速筋タンパク」摂取による筋肉増加効果が、基礎代謝量および安静時代謝量の増加に関与した可能性が示されました。
■高校男子サッカー部員におけるスケソウダラ速筋タンパク質による筋肉増量効果
椙山女学園大学生活科学部管理栄養学科講師 三田 有紀子(注4)
本研究では、日常的に比較的強度の高いトレーニングを行っている高校生を対象に、スケソウダラ「速筋タンパク」摂取後の筋肉量の解析を実施し、筋肉量の増加効果が認められました。 試験は、愛知県にある高校サッカー部員36名を対象とし、スケソウダラ速筋タンパク4.5gを含有したかまぼこスティック(フィッシュソーセージ様食品)を8週間毎日朝と昼の間の補食として摂取してもらい、いつものトレーニングや食生活を維持してもらいました。 介入前4週間を合わせた全12週で筋肉量の計測を行ったところ、(介入4週前、介入0、4、8週目の4回測定)四肢の骨格筋量指数(SMI)の変化量は、特に介入4~8週で高値を示し、介入0~4週の変化量よりも有意に増加しました(図3)。 スケソウダラ速筋タンパクの継続的な摂取により、4週目以降から筋肉量増加効果が認められることが示唆されました。
ニッスイは、これからも水産物が持つ特徴的な機能に着目した研究を継続するとともに、その成果を活用して、人々の健康的な生活に貢献する商品の開発をすすめていきます。
- 注1 複数の研究機関で構成され、農林水産省管轄の「知」の集積プラットフォーム(「水産物由来成分を活用したロコモーション機能改善素材探索」研究開発プラットフォーム)内に所属している産学官連携の研究組織です。
- 注2 安静時代謝量とは、仰臥位あるいは座位で安静に過ごしている状態で消費されるエネルギーのことで、安静時代謝量の9割は、基礎代謝量によるものと言われています。
- 注3 ニッスイ・龍谷大学農学部食品栄養学科・龍谷大学大学院農学研究科食農科学専攻による共同研究です。
- 注4 椙山女学園大学生活科学部管理栄養学科とニッスイによる共同研究です。
以上