スケソウダラタンパク質に関する研究成果65歳以上の女性の骨格筋や筋力の増加を無作為化比較試験にて確認
2021年06月25日
日本水産株式会社(代表取締役 社長執行役員 浜田 晋吾、東京都港区、以下「ニッスイ」)の食品機能科学研究所では、白身魚であるスケソウダラのタンパク質(APP:Alaska Pollack Protein)の筋肉増加効果について、2009年より愛媛大学と研究を開始し、2018年3月にAPP研究会(注1)を設立し、愛媛大学・東京大学・早稲田大学・徳島大学など18の大学や研究機関と研究体制を整え、共同研究を行っています。 その結果、APPには乳清や大豆・鶏卵のタンパク質との比較から筋肉の肥大効果が確認されるなど、さまざまな有用性が明らかになり、ニッスイでは2020年よりAPPをスケソウダラの「速筋タンパク」という名称を使って、素材の筋肉増加効果の認知向上を図っています。
このほど、本研究会から得られたスケソウダラ速筋タンパクに関する研究成果について、第63回日本老年医学会学術集会 (2021年6月11日~27日、WEB開催)において以下のとおり発表しました。
■スケソウダラ速筋タンパクの摂取が地域在住高齢者の骨格筋量や身体機能に与える効果:無作為化比較試験
徳島大学先端酵素学研究所糖尿病臨床・研究開発センター助教 森 博康 (注2)
スケソウダラ速筋タンパクの摂取が高齢者の骨格筋量や筋力・身体機能に与える効果を明らかにするため、65歳以上の女性(92名)を対象に6か月間の二重盲検無作為化プラセボ対照試験(注3)を実施し検証しました。
【研究内容】 試験は、健常な65歳以上の女性を対象とし、速筋タンパクを摂取する群(APP群:46名)と乳清たんぱく質を摂取する群(PLA群:46名)の2群に割り付け、1回あたり各素材4.5g(たんぱく質量として)を含む試験食を、両群ともに24週間にわたり1日1回摂取してもらいました。介入前および介入開始4週間後・12週間後・24週間後に四肢の骨格筋量や膝伸展筋力などの評価を実施しました。
【結果】 APP群は摂取開始12週間後および24週間後に、PLA群と比較して四肢の骨格筋量と膝伸展筋力が有意に増加しました(図1)。またAPP群とPLA群の四肢の骨格筋量や膝伸展筋力の変化率を比較したところ、APP群はPLA群と比べ12週週間後から有意に増加しました(図2)。
図1 評価項目(四肢の骨格筋量(SMI)・膝伸展筋力)
平均値.±標準偏差. *:p<0.05
平均値.±標準偏差. *:p<0.05
図2 評価項目(四肢の骨格筋量(SMI)・膝伸展筋力の変化率)
平均値.±標準偏差. *:p<0.05
平均値.±標準偏差. *:p<0.05
以上の結果より、運動介入を伴わない速筋タンパクの摂取により、乳清タンパクに比較して骨格筋量や筋力の増加が認められたことから、習慣的な速筋タンパクの摂取は高齢者のサルコペニア予防を目的とした介入方法の一助となることが、長期間の臨床試験から示されました。
ニッスイは、これからも水産物が持つ特徴的な機能に着目した研究を継続するとともに、その成果を活用して、人々の健康的な生活に貢献する商品の開発をすすめていきます。
- 注1 複数の研究機関で構成され、農林水産省管轄の「知」の集積プラットフォーム(「水産物由来成分を活用したロコモーション機能改善素材探索」研究開発プラットフォーム)内に所属している産学官連携の研究組織です。
- 注2 徳島大学先端酵素学研究所糖尿病臨床・研究開発センター、日本水産㈱、(一財)兵庫ロコモシニア寺子屋による共同研究です。
- 注3 効果判定に影響をおよぼすバイアスを取り除くために、対象者を無作為に複数の群に振り分け、試験を担当する研究者および被験者ともにどの試験群に属しているかわからない状態で行う試験のこと。
以上