ニッスイの健康経営、2020年度の取組
2021年02月17日
日本水産株式会社(代表取締役 社長執行役員 的埜明世、東京都港区、以下「ニッスイ」)では、「健康経営宣言」(2016年度制定)に基づき2017年度より健康経営に着手、本年度で4年目となりました。
同宣言は、従業員が「能力を十分に発揮できること」「従業員とその家族のQOL(生活の質)の向上」を目指して、従業員の心と体の健康を積極的にサポートすることにより、多様な人材が健康で能力を発揮できる環境を整備し、生産性向上につなげることを企図しています。
この活動の結果、経済産業省と東京証券取引所の共同による「健康経営(*1)銘柄」に2年連続で選定されています。
2020年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により一部の施策で遅延が発生しましたが、引き続き、「個人の健康促進」「仕事と私生活の両立支援」「働きやすくやりがいのある職場づくり」を3本柱に、「禁煙対策」「健康+(プラス)ストレージキャンペーン」「EPA(*2)/AA比」(*3)の測定などの取り組みを行いました。
Ⅰ 個人の健康促進
(1)禁煙対策
ニッスイでは2022年度に「365日就業時間禁煙化」をめざしており、その前段階として、毎週水曜日の就業時間中を禁煙とする「禁煙デー」を2020年10月1日に導入し、2021年1月1日より全従業員に拡大しました。
- 【内 容】毎週水曜日を「就業時間(※)中を禁煙」とする。※始業前・終業後、昼休憩は除く
- 【スローガン】「水曜日はタバコを吸い(水)ません!!」
- 【対象事業所】全事業所(支社・工場・研究開発拠点含む)
- 【開 始 時 期】2020年10月1日
これまでニッスイでは、2018年度に本社の喫煙室を閉鎖し、2019年度に全ての販売支社の喫煙所を閉鎖、また社長の禁煙宣言や定期健診時に合わせた保健スタッフによる喫煙者への個別指導を実施するなど、禁煙対策や禁煙啓蒙活動を実施してきました。このような取り組みにより、2020年度の喫煙率は 2016年度から5.2%減少しています。
(2)「EPA/AA比」の測定
定期健康診断の検査項目として、心筋梗塞・脳梗塞などの循環器系疾患の発症との関連が示唆される指標であるEPA/AA比を全従業員に取り入れ、全社平均0.4 (*4)を目標値としています。2016年度に開始したこの活動は、ニッスイの主要事業であるファインケミカル事業の中核をなすEPA(エイコサペンタエン酸)を社員の生活習慣病予防に活用するものです。 EPA/AA比の全社平均は、2016年度では0.29、2018年度は0.38と目標に向けて上昇したものの、2020年度は0.33にとどまりました。要因として、コロナ禍のなかでの食生活・生活環境の変化が影響している可能性があります(小林 悟・元城西国際大学薬学部教授による解析(*5))。 一方で、2018年から希望する従業員に対して、定期健診前にEPAを多く含むニッスイ商品を集中的に摂取してもらう「EPAチャレンジ」を実施しており、この参加者のEPA/AA比は2019年度に比べて平均で0.17上昇しています。測定結果は個人にフィードバックするほか、部署ごとに集計して「健康番付」を作成しています。
2020年EPA/AA比 部署別健康番付
<データ解析からの示唆> 2020年度の定期健康診断では、EPA/AA比が0.4以下の部署は56部署中33部署でした。前年の24部署から増加しており、年齢構成比の高い40歳台および50歳台でEPA/AA比の平均値が低下したことが影響しています。今後10年間に心筋梗塞・脳梗塞を発症するリスク(%)は、高いほうから60歳台>40歳台>50歳台となっており、特にEPA/AA比が低下した40歳台では、心筋梗塞・脳梗塞や個別の発症リスクも前年度よりが高くなっていました。心筋梗塞・脳梗塞の発症リスクは、2016~19年度および2020年度の結果から、EPA/AA比で0.4以上であればその値が上昇するにしたがってリスクが低減することが推測されました。また、前年度と比較して、2020年度にEPAを摂食する施策を実施した部署においては明らかなEPA/AA比の向上も確認できています。 今後も平均でEPA/AA比が0.4を下回る部署・従業員へ向けた食生活などの改善施策を効率的かつ実効的に行うことで、全体のEPA/AA比の向上による健康の維持増進の実現が期待されます。 〇データ解析および監修:小林 悟氏(元城西国際大学薬学部教授)
(3)健康UPセミナーの開催
従業員の健康に関する意識を高め、自身の行動変容に繋げることを目的に、今年度初めて、オンライン形式で食・運動・疾病予防等に関するセミナーを開催しました。 第1回(7月) は「ココロとカラダを整える食事」と題して、保健スタッフが健康的な食事の摂り方についてレクチャーました。第2回(9月)は、食品機能科学研究所の担当者がEPAやスケソウダラの速筋タンパクについて解説したところ、全国の拠点から約120名の参加がありました。また、終了後のアーカイブの視聴も好調であり、ニッスイが提供する機能性素材への関心の高さが窺える機会となりました。第3回(11月)は運動篇として、RIZAPよりスポーツトレーナーを講師に招いて開催しました。自宅を含めた複数拠点から、約90名の従業員と家族が参加し、実際にからだを動かしながらトレーニングを体験しました。
(4)健康+(プラス)ストレージキャンペーン2020」の実施
定期健診時期にあわせて、生活習慣を見直すプラス行動を支援する取り組みとして、2018年度より「健康+ストレージキャンペーン」を実施しています。2020年度は334名(前年は250名)が参加し、78%の方が目標を達成しました。
- 期間:6月1日~11月30日(自ら設定した60日間で挑戦)
- 対象:全従業員のうち希望者
- 内容:健康増進や生活改善につながるコース毎に60日間での達成目標を設定し、達成者にはカフェテリアポイントもしくは健康支援グッズを贈呈。
コース(例):30分以上の息が弾む運動を週2回以上
魚の主菜1日1回以上あるいはEPA+DHA900mg以上摂取を40日以上
2か月で2㎏の体重減、かつ40日以上の体重記録 など
Ⅱ 仕事と私生活の両立支援
育児・介護・健康のサポート
仕事と育児・介護の両立を支援し、健康増進や疾病予防の取組を強化するため、2018年度から福利厚生制度にカフェテリアプランを導入しています。ポイント消化率は年間8割を超えており、最も利用が多いメニューは、主に医療・自社健康商品購入費・ワークライフバランス関連です。
2020年度はコロナ禍による運動不足解消を目的に、スポーツ用品・運動器具購入へも適用範囲を拡大し、運動推奨を図っています。
また、2019年度から、短期傷病時に利用可能な有給休暇として年5日を上限に「あんしん休暇」を導入しており、2020年度はコロナ罹患の疑いのある方にも提供範囲を拡大しています。2020年度上期で176名の従業員が利用しています。
Ⅲ 働きやすくやりがいのある職場づくり
テレワーク勤務制度の定着
ニッスイでは、どこでも働ける柔軟な働き方を目指して、2019年度よりテレワークを導入し、同年9月には自然災害等で通勤困難な状況を想定して、本社で一斉テレワークを実施するなど、テレワーク勤務制度の普及を図ってきました。 2020年度は新型コロナウイルス感染予防にこの制度を活用し、緊急事態宣言時には、全従業員対象に原則在宅勤務としました。 今後も働き方改革を継続し、さらなる柔軟な働き方を推進していきます。
- (*1)「健康経営」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
- (*2) EPAとは
EPA(エイコサペンタエン酸)はイワシなどの魚油に含まれる成分のひとつで、オメガ3系の必須脂肪酸の一種ですが、体内でほとんど生成することができないため、毎日の食生活を通じて摂取する必要があります。 EPAは、心疾患リスクの軽減や血中中性脂肪の低下、抗炎症などのさまざまな作用が認められています。1990年には閉塞性動脈硬化症、1994年には高脂血症の治療薬として認可されました。
なおニッスイでは、肉中心の食生活を送る現代人に向け、肉の日(29日)の翌日の30日に青魚のEPAを摂取すること推奨し、バランスの取れた食生活を提案するため、毎月30日を「EPAの日」として一般社団法人日本記念日協会に登録、認定されました。 - (*3)EPA/AA比とは
健康を維持するEPAの機能についてはすでに多くのことが明らかにされていますが、今日、特に注目されているのが、EPAとAA(アラキドン酸)の体内バランスを示す比率「EPA/AA比」です。
AAは必須脂肪酸ですが、肉や植物油(リノール酸)の摂取に偏った食生活を続けていると体内で増えて炎症を促進し、動脈硬化を起こしやすい体質にするものです。一方EPAは、炎症を抑制し動脈硬化が起こりにくい体質にします。
EPA/AA比が高いと心血管疾患による死亡率が低いことが発表され(九州大学大学院医学研究院による「久山町研究」、Atherosclerosis 231 (2013) 261-267)、EPA/AA比があらためて注目されています。 - (*4)EPA/AA比の目安
EPA/AA比は、0.4以下で心血管系疾患との関係が指摘されており(参考文献は下記)、ニッスイでは2016年度よりこの数値を初期の到達目標としました。
米国心臓学会は、冠動脈疾患予防のためのEPA/AA比として、0.75以上を、二次予防では1.0以上を推奨しています。
参考文献
- ・Atherosclerosis 231 (2013) 261-267
- ・British Journal of Nutrition 89,267,2003
- ・Lancet2007;369:1090,Lipids,25,505(1990)
- ・日本心血管カテーテル資料学会誌 8 219(2008)
- *Nutr Metab (Lond). 2013 12;10(1):25
- *Diabetes Care. 2014;37(1):e7-8
- *Atherosclerosis. 2016 ;249:65-9
- *Atherosclerosis. 2015 ;239(2):583-8
- *Nutrition. 2013;29(1):127-31
- *Circ J. 2012;76(2):423-9
- *Hypertens Res. 2016 ;39(4):272-5
- *Nutr J. 2015 ;14(111):1-6
(注4) 解析対象数は 2,122 人(2016年)、2,300人(2017年)、2,267人(2018年)、2,309人(2019年)、2,382人(2020年)
以上